Fukuyama Topics
2026.08.24
事業承継
後継者不在率の低下と後継者の実像
中小企業白書によると、後継者不在率はこの10年で66.0%から50.8%へと、15ポイント以上減少しました。
経営者年齢のピークも、10年前は60歳代前半、5年前は60歳代後半へと高齢化が進んでいましたが、直近では50歳代後半がピークとなっています。こうした数字だけを見ると、長年課題とされてきた中小企業の後継者問題は、少しずつ解決に向かっているようにも見えます。
しかし、実態はそれほど単純ではありません。
同白書によると、休廃業・解散する企業は2016年以降、年間約6万社で推移し、2024年以降は約7万社へと増加傾向にあります。後継者を見つけて事業を引き継いだのではなく、「事業そのものを後継しない」という選択が多く取られたことも、後継者不在率を押し下げた大きな要因の一つです。
また、M&Aの件数は2016年と比較して倍増しており、親族以外への事業承継も大きく進んでいます。
つまり、昔ながらの「子どもなど親族に会社を引き継ぐ」という形で後継者問題が解消されているわけではありません。後継者となる人材を確保できず、休廃業・解散を余儀なくされる企業がある一方で、M&Aによって他社へ事業を引き継ぎ、一人の経営者や一つの企業グループが複数の事業を担うケースも増えています。
こうした企業の退出や集約が進んだ結果として、後継者不在率が低下してきたという側面もあるのです。
近年、日本政府も企業の規模拡大や生産性向上を重要な政策課題と位置づけ、M&Aなどによる企業の集約や「100億企業」の創出を後押ししています。今後も、中小企業が現在と同じ数、同じ形のまま存続していくというより、統合や再編を伴いながら企業の新陳代謝が進んでいくことが予想されます。
そう考えると、自分の子どもに事業を承継できるということは、実は非常に恵まれた状態とも言えます。
もし幸運にも、事業を託せるだけの意欲や営業力、経営者としての素質を持つお子さんがいらっしゃるのであれば、経営者自身が元気なうちに、「将来、この事業を託したい」ときちんと伝えておくことが重要です。
事業承継は、経営者が「継いでほしい」と思った時に、すぐに実現できるものではありません。
引き継ぐ側にも、自分自身の人生があります。会社の将来性や経営環境、自分に経営ができるのかという不安も含め、さまざまなことを考えたうえで決断するための時間が必要です。
経営環境が厳しさを増し、親族内承継が当たり前ではなくなった今だからこそ、「いつか話せばいい」ではなく、元気なうちから将来について話しておくこと。
それが、事業を次の世代へつなぐための第一歩ではないでしょうか。
